明け方、部屋に戻った実井を波多野は待ち構えていた。

「ゆうべは随分愉しんだみたいだな・・・」
波多野が言うと、
「命令どおりにしただけですよ」
悪びれずに実井が答えた。

「貴様・・・結城さんが好きなんじゃなかったのか!?」
波多野が叫ぶと、
「ひとりにしなきゃ駄目なんですか?」
そう問い返す。
「・・・誰でもいいのかよ・・・貴様」
「貴方に関係ありますか?」
「・・・じゃあ・・・」

波多野は実井の腕を掴むと、服の上から自分の硬くなった下半身を触らせた。
実井は驚いている。
「誰でもいいんだろ?口に入れてみろよ」
「え・・・でも・・・」
「目を閉じれば、誰だって同じだろ・・・」

波多野の本気が伝わったらしく、実井は大人しく床に膝をついた・・・。


「よぉ、実井。調子はどうだ」
神永だ。
「貴方のおかげで上々ですよ」
「波多野の奴、落ち込んでやがんな」
「当分盗聴はしないでしょうね・・・まあ、そのうち回復するでしょうけど」

あの夜、実井は神永に、演技するように依頼したのだ。
<この部屋は盗聴されています。僕に合わせてください>
そう書いたメモを渡した。

波多野の盗聴趣味は学生たち皆の悩みの種だったので、神永はすぐに合点がいって、実井の色っぽい誘いに乗ったふりをしたのだった。
演技とはいえ、途中まではお互い迫真の演技で、実井にキスされて、思わず抱きしめたくなるのをこらえるのが難しかった。

実井がわざと椅子を倒したり、布の擦れる音を立てるのを、神永は見ていただけだった。

「でも、あのあと、部屋に波多野いたんだろ?貴様は・・・」

「多少身体も張りましたけど、おかげで会話を録音できましたしね」
「なんか不憫だな。波多野の奴、自分じゃ気づいていないようだが、たぶん、貴様のことが好きで・・・」

言われなくても、盗聴器の数の多さで、実井は気づいていた。

「<燃やす>ってのは、こうやるんですよ」
実井は舌を出した。











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