寮の部屋。

「波多野・・・ちょ・・・待って・・・」
「じらすなよ。約束だろ」
「そうだけど・・・動いたら傷口が開くよ」
「構わないよ・・・その程度のこと」

なんであんな約束をしたんだろう。
今になって後悔しても遅かった。
傷が治ったら、女装姿でさせてやるよ。
そんなことを口走ったっけ。
傷を負った波多野を元気付ける為の方便だったが・・・。

波多野のほうももう学んでいた。
実井が本性をあらわすのは、<結城さん>に触れた時だけだ。
それにさえ触れなければ、実井は大人しい性格のまま、波多野の意のままになるのだ。
裏を返せば、それだけ<結城さん>に対して本気だということだろうが・・・。

「ちょ・・・波多野・・・」
「もうしゃべるな。気が散る」
「・・・・・・」

波多野は実井を布団の上に押し倒し、その帯に手をかけた。
するん、と帯は解けて、実井の白い足があらわになった。
その足を手に取り、波多野は自分の身体を間に割り込ませた。
「っ・・・」
性急に思いを遂げようとする波多野に、実井は顔をしかめる。
まだ慣らされていない体は硬く侵入者を拒んでいた。
だが、技巧めいたものを、波多野に求めても無理だろう。
だが、せめて・・・。

「波多野・・・」
「・・・・?」
「・・・キスして・・・」
実井の濡れた様な赤い唇が、花のように咲いていた。
透明な蜜があふれ出してくる。
波多野はそれを、貪るように吸った・・・。

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