神永は、実井の髪を触りながら、その赤い唇に唇を合わせた。

「・・・・おい、いつまでやってんだよ」
低い、波多野の声。
それが聞こえないかのように、神永はキスに集中している。
唇を軽く噛み、舐めて、それから吸った。

実井は動けない。
意識はあるのだが、身体が麻痺して、感覚がなかった。
いつもばら色に染まっている頬は、白く青ざめて、目は見開いたまま、息を殺している。
神永はキスを繰り返しながら、胸のボタンを外していった。
白い、女のような肌があらわになり、月の光の中で白く浮かび上がった。
波多野は思わず息を呑む。

その首筋にキスをして、さらにだんだんと下に唇を下ろそうとした神永を、波多野が止めた。
「おい、交代だ」
「交代?・・・まだ俺の番だろ」
「さっさと代われよ」
「嫌だね」

行為をやめようとしない神永の肩を掴んで、波多野は思い切り揺さぶった。

「ふざけんな!その手を離せよ!」
「あぁ?・・・なに言ってんだ。誘ったのはそっちだろ」
「貴様の役目はもう終わりだ。出て行け」
「そっちこそ、ふざけんなよ。こんなところでやめられるか」
神永は波多野の襟首を掴んで、壁にたたきつけた。
衝撃で、本棚の本が崩れ落ちた。

そのとき、扉が開いて、誰かが顔を出した。
「何をどたばたやっている?・・・なんで、電気をつけていないんだ」
電気がついた。
小田切だ。
ふたりははっとして、お互いの顔を見合わせた。

「そこにいるのは・・・実井か?」
実井は、半裸に剥かれて、目を開いたまま動けないでいる。
「貴様ら・・・何を夜中にこそこそやっているのかと思ったら・・・」
小田切は、上着を脱ぐと、実井の身体にかけて、それから抱き上げた。

「このことは上に報告する。いいな」
そういい捨てると、小田切は部屋を出て行った。





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