田崎の尋問が終わったとき、誰一人、話す者はいなかった。
次は誰の番なのか。それは誰にもわからなかった。

「田崎。大丈夫か」
小田切が尋ねた。
「ああ・・・平気だ・・・」
「気のせいかいつもより苛烈だった気がする。貴様、なにをやった」
「さあね・・・こっちが聞きたいよ」
田崎は笑って見せた。それから失神した。


夜。
「神永さん?入りますよ」
部屋に入ると、神永がいた。
「本を取りに来たのか」
「ええ。丁度読みたくなって。構いませんか?」
「構わないよ。まあ、座れば」

実井は、出されたお茶を飲んで、自分の本に目を通した。
神永はじっとその様子を眺めている。
ページをめくる音が響いた。
「実井」
「はい?」
神永は、実井を背中から抱きしめた。
「神永さん?」
不審そうな声。
「悪いな・・・」
バン、と入り口が開いて、入ってきたのは波多野だった。
驚いてる実井を、神永は羽交い絞めにする。

「なん・・・だと?」
「貴様がいつまでたってもやらせてくれないから、強硬手段にでることにしたよ」
と神永。
「・・・卑怯だぞ・・・波多野・・・」
「作戦に協力者の存在は重要だって習ったろ?」
波多野の暗い声。
「・・・くっ・・・離せ・・・神永・・・」

「俺は神永を燃やしたんだ。たまたま利害が一致してね・・・」

「暴れても無駄だよ。すぐにモルヒネが効いてくる」
さっきのお茶か。
実井は青ざめた。
体中から力が抜けていくようだ。
神永の腕にもたれかかった実井を、神永が抱き上げた。

「いい子だ・・・」
電気が消えた。
実井はどさり、と布団に落とされた。

「俺が先だ」
そういいながら、神永は手のひらで、実井の髪を漉いた。




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