「次の尋問訓練は、田崎だってさ」
「田崎?田崎はやらないはずじゃなかったか」
「それが・・・尋問されてる三好が色っぽい、とかいった発言が結城さんの耳に入ったらしくて・・・そうか、三好は色っぽかったか、なら、次は貴様だ。とか言われたらしい」
「まじか・・・誰が密告したな」
「俺たちスパイだからな・・・」

神永と小田切が話している。

「そういえば、波多野は尋問でもされたのか?随分ふらふらだった」

思いついたように小田切が言った。
「波多野?波多野はまだだよ。確か」
と福本。
「でも顔色は蒼白で、死にそうな顔をしていたがな」
と小田切。
「案外、誰かに自白剤を打たれたんじゃないか?尋問ごっこが流行ってるからな」
と神永。

「何の話ですか?」
実井がやってきた。

「・・・ゆうべ、波多野に何かした?実井」
と神永。
「貴様、波多野の部屋から出てこなかったな」
と福本。
「さあ?僕はずっと自分の部屋にいましたけど」
実井はとぼけた。

「だが、夜中に貴様の部屋を訪ねたとき、誰もいなかったぞ」
と神永。
「なんで夜中に実井の部屋を訪ねたんだ?」
と小田切。
「それは・・・借りてた本を返そうと思って」
「夜中に?」
「たまたま目が覚めて・・・手持ち無沙汰で・・・俺のことは別にいいでしょ」
と神永。

「波多野の様子がおかしいって、いつものことじゃないですか?僕、御腹すいたな」

会話を終わらせるように言って、実井はお釜をあけて、ご飯をついだ。

「今日のおかずは鮎の天麩羅だ」
と福本。
「福本さんの料理はおいしいから、嬉しいな」
実井は無邪気に言って、

「おかわりしてもいいですか?」
その少年のような頬で微笑した。





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