「貴様、俺のことが好きなんだろう?」

実井の顔が皮肉に歪んだ。
見たことのない顔だ。
自信に満ちて不遜で、波多野を見下している。
傲慢な顔つきだ。

「貴様・・・本当に実井か?」
波多野は眉をひそめた。

「実井であることに何の意味がある?俺たちはどうせ、名前さえもホンモノじゃないのに」
実井は、ズボンに滑り込もうとしていた波多野の右手をねじりあげて、窓に押し付けた。

「くっ・・・」
苦痛に顔をゆがめ、波多野はだが、まだ自分の目が信じられない。

「勘違いしているようだが、俺は犯されるよりも犯すほうが好きだ・・・。このまま外から見えるこの窓に貴様を押し付けて、犯してやろうか?」

窓際の机の上のものを払いのけて、実井は波多野を机に座らせた。
凄い力だ。
線が細い割りに筋肉質だとは思っていたが、どこから力を出しているのか、その腕は鋼のように波多野を押さえつける。

「そんな怯えた目で俺を見るなよ。興奮するじゃないか・・・?引き出しに自白剤のサンプルもあるんだろう?丁度いいから試してみようか」

脅しながら、片手で引き出しを開ける。
中に、注射針の入ったケースがあった。
「ほら、あった。貴様の隠す場所はワンパターンだからな」
「どうして・・・」
実井は波多野を羽交い絞めにしながら、片手でケースを開けて、注射器を取り出した。

「お医者さんごっこといこうか・・・まずは目隠しをして」
実井は波多野の目にタオルを巻いた。
「や、やめろ・・・!」
「聞こえんな」
「やめてくれ・・・頼む・・・」
「すぐに良くなるよ」
腕に、ちくりとした痛みが走った。

「ほーら、だんだん気分があがってきたろう?」
「・・・」
気のせいか、胸がむかついてきた。

「キスする勇気もないくせに、この俺に手を出そうなんて100年早いよ」

波多野を机の上に押し倒し、実井はその顎を捉えて、噛み付くようなキスをした・・・。








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