「お前と福本と小田切って、前から仲がいいが、一体どんな話をするんだ?」
上着を手に取った田崎に、甘利が尋ねた。
「え?そんなに仲がよく見えるかい?俺は誰とでも同じ距離で接してるつもりだけど・・・あ、三好は別だよ」
「そこは、甘利は別だよっていって、キスするところじゃないか?」
「なぜ?」
「なぜって・・・まあ、いいが。福本たちといるとお前はなんだか落ち着いているからな。気楽なのかと思っていたよ」
「ははっ、それは、二人が落ち着いているからね、合わせているだけだよ。あぁ、でも・・・」
「でも?」
「う・・・ん、多分あの二人、俺が一緒にいると安心するみたいだよ」
「安心?どういうわけだ?」
「まぁ、・・・そうだね・・・。僕が理性的って話だよ」
「お前が?お前が理性的・・・ねぇ?」

「んっ・・・、もう、夕べ散々やったんだから、今日はもう休ませてよ」
「休まないのはお前だろ?どこに行こうとしてるんだ」
「甘利を見てるとシたくなるから、外の空気を吸いに行くだけだよ」
「素直にすればいいだろ?」
「俺を殺す気か?!」
「あのなぁ、どうみても俺のほうが死にそうだぞ・・・」
「甘利・・・お供えの花でも買ってくるよ」

恨みがましい甘利を部屋に置いて、宿を出ると、ちょうど通り道に花屋があって、田崎は苦笑した。
ふわっといい薫りがしてくる。
この季節、あまり花の種類はないが、いくつかの花や葉の薫りが重なって、甘く清々しい香りがする。

田崎はふと小田切を思い出した。
時々、小田切たちといると、なんともいえない花のような薫りが微かに漂ってくるのだ。
「そういえば・・・最近、特にいい薫りだよね・・・」

そして、二人が田崎に話しかけてくることが確実に増えた。
まるで二人になるのを避けるみたいに。
「いいね・・・初々しくて」
田崎は苦笑した。
そんな風にできたらどんなにいいだろう・・・。




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