ドイツ。ハーメルン。
目を覚ましたとき、既に結城さんはいなかった。
僕はベッドの上でぼんやりと、昨夜のことを思い返していた。
「・・・あぁ・・・はっ・・・」
結城さんの指が、僕の中を掻きまわし、思考を滅茶苦茶にした。
もう限界だ。
「・・・はやく・・・」
自分の瞳が濡れて猫のように光るのが分かる。
瞳で、言葉で、結城さんを誘う。
でないと、焦らすのが好きな結城さんに翻弄されてしまう。
どうして欲しいのだ。
結城さんが問う。
ああ、わかっているのに、僕に言葉で言わせるんだ。
「貴方を・・・ください・・・」
僕の声は小さくなる。
結城さんは笑う。
聞こえんな。
僕は羞恥に赤くなりながら、言葉を継いだ。
「い・・・れて・・・」
僕が、結城さんに満たされたとき、視界は白くなり、どこまでも堕ちて行く気がした。
堕ちて、行くんだ。
堕天使みたいに。
激しい動きも、女のような喘ぎ声も、自分のものとは思えなかった。
これは儀式だ。
なにか、とてつもなく神聖な儀式の一部・・・。
突き上げられて、落とされ、また突き上げられる。
僕の手足はばらばらになりそうだ。
心臓の鼓動ばかりが大きくて、叫び声はかき消される。
もう・・・。
僕の手は虚空を掴んだ。
生理的な涙が、頬を伝わり、シーツに紙魚を作った。
「離さないで、ください」