事が済んで、帰ろうとする俺を真島が引きとめた。

「待てよ、その格好で帰る気か?俺を警官暴行罪で逮捕させたいのかよ?」
「・・・」
前のはだけた警官のシャツ。確かに言い訳はできない。
「俺の上着を着ていけよ」
「あんたの?」
銀色に光る上着は、どうみてもカタギじゃない。裏地は竜の模様だ。
俺が躊躇していると、
「体面を気にしてる場合か?」
真島が皮肉に笑った。

「・・・・・・帰る」
「送ってくよ」
「いい。いらない」
「おい、神永」

上着だけ借りて、俺はさっさと園を出た。

無駄だった。
苦い後悔がこみ上げる。
真島は、何も思い出さないし、覚えているそぶりもない。
俺と会ったことがあるような気がするというのは、リップサービスだろう。
俺が、真島に気があると思って、そういっただけだ。クソ!
ヤクザに身を任せるなんて、俺もどうかしている。
真島は服も脱がなかった。俺を軽く見ている証拠だ。
舐めやがって・・・。

いきなり抱かれたせいか、身体が熱っぽい。
真島のものが、まだ身体の中に残っているような気さえする・・・。
あいつ・・・ペニスを改造してたりしないだろうな。ヤクザにはよく真珠を入れてたりする奴がいるけど・・・。

ここから波多野のアパートが近いな。
この格好じゃ目立つし、あそこに寄って服を借りるか・・・。
そう思って、アパートの前まで来ると、実井が顔を出した。
「神永さん。来るのが見えたんで」
「ああ、ちょっと、服を借りたくて・・・」
「どうしたんですか?その服?変わったセンスですね・・・」
「ちょっと知り合いに借りたんだ。波多野いる?」
「今、お風呂に入れてるところなんです」
波多野・・・。
「神永先輩?ちょっと待ってください。もうすぐ終わるんで」
「ああ」
俺も風呂に入りたいな・・・。だが、ここで借りるのは気がひけるから、まあ服を借りてさっさと帰って・・・風呂に・・・。
真島の匂いを洗い流したい。

その時携帯が鳴った。
知らない番号だ。
「はい、神永・・・」
『真島だ。てめー、浮気してんじゃねーぞ』
え?
俺は慌てて外を見た。ベランダの下に、高級車が停まっていて、真島の顔が見えた。
「つけてきたのかよ」
『どこへ行くのか気になってな。波多野とできてんのか?てめー』
そうだ。ヤクザは暇なんだ。
暇な奴に勝てる奴はいないって、甘利が言ってたな・・・。















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