「神永じゃないか」

トトロ園の門の前をうろうろしていたら、背後から声をかけられた。
高級車を停めて降りてくるのは、真島だ。

「なにしてんだ?入ればいいじゃないか」
「あ、ああ・・・」
「?俺に会いに来たのか?」
「違う。たまたま・・・通りかかっただけだ・・・」
「アリスとサヤカはあんたが大好きなんだ。さっさと入れよ」
「ああ」

アリスとサヤカは5歳の双子だ。肩で切りそろえた綺麗な髪をしている。
ちょっと、市松人形みたいだ。
「ケイサツのお兄ちゃん!」
アリスが駆けてきた。
「アリス?いや、サヤカか?」
「アリスだよ!サヤカはあっち!」
弾んだ声で、アリスは俺の足元に抱きついた。

子供をダシにしているようで、気がひける・・・。

理事長室で、俺は真島と差し向かいになった。
「俺に用事なんだろ?」
サングラスの奥で、真島の眼が鋭くなった。
笑っているのに、笑っていない。
「・・・いや、用事じゃないよ。ちょっと時間が余って・・・」
「もったいぶるなよ、なんだ?がさいれでもあるのか?この園に」
「そんなんじゃない。心配するな」
値踏みするように、真島はじっと俺の顔を見つめた。
「本当だな?」
「あんたに嘘は言わないよ」
「それを聞いて安心した。ここんとこ少しきな臭くてな。ビジネスもやりにくくなってきたよ」
真島はサングラスを外した。どきりとする。
やっぱり・・・似ている。俺の知ってる、真島に。

「どうした?」
「いや・・・なんでも・・・」
「あんたは俺を見るとき、懐かしそうな目をするな・・・まるで、昔の恋人にあったみたいな・・・なぜなんだ?」
真島の問いは真っ直ぐだった。



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