「それがさ〜、ホントに夫婦みたいになっちゃってて、笑うに笑えないっつーか?」
俺の言葉に甘利も頷いて、
「わかる。波多野は恭子ちゃんを実井だと思い込んでるしな」
と言った。
「えっ?あれは実井だろ?疑ってるのか?」
「最初俺たちを見ても無反応だったしな。別人の可能性もある」
驚いた。
甘利は信じてないんだ。
恭子ちゃんが、実井だってこと。
恭子ちゃん・・・本名は小田切京介。18歳。
波多野の同棲相手。前世は実井・・・のはず。

「確かに性格はいいようだけど・・・実井に比べると」
「まだ若いからな」
「歳は関係なくね?実井はたぶん子供の頃から性悪だよ」
「へえ?そうかな。随分詳しいな、神永」
意味ありげに、甘利が言った。
「まあ・・・貴様よりは」
つい、貴様という言葉が出た。
古い前世の言い回しだ。
俺は顔をしかめた。
「くそ、癖が抜けないな・・・仕方ないか。甘利もいることだし・・・波多野・・・実井・・・」
「俺たちの前世がまやかしじゃないって分かってよかったじゃないか」
「よくないよ」
俺は言った。
「俺たちが生まれ変わったってことは、皆戦争で死んだってことだろ?」
「まあね。でも結城さんや三好は見つかってないんだから、皆じゃないかもな」
「そうだな・・・会いたいよ・・・」
俺はライターを弄びながら、甘利を見上げた。

甘利は俺の手を掴み、自分の煙草に火をつけた。
しゅぼっ。
こんなところは、あの頃のままだ。
「一番会いたい奴には会えたんだろ」
「え・・・」
「最近よく出入りしてるみたいだもんな。例のトトロ園に」
「あれは・・・子供たちに会いたくて・・・別に真島に会いに行ってるわけじゃ・・・」
「そうかよ」
甘利は俺の手を掴んだまま、じっと俺の顔を見上げた。
「まだ奴さん、思い出してないんだろ。だけどうっすらと懐かしい気がする・・・お前のことを・・・だんだん思い出す・・・」
「やめろよっ!」
俺は甘利の手を振り払った。
「真島とはなんでもない!情報を交換してるだけだっ!変な勘繰りするなよ!」







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