<別バージョンのエンディング>

「ユウキに会ったそうだな・・・」

高級車を運転しながら、真島は言った。

「ああ・・・」
「俺のこと、聞いたんだろ」
「ああ」
「・・・答えは、でたか?」

サングラスの奥の横顔。表情は見えない。

「でたよ。あんたは、俺の恋人じゃないってことがわかった」

車は、東京湾の港に着いた。
巨大なビル郡と、巨大な観覧車が見えた。
風が強い。空は曇天で、今にも降り出しそうだ。
「嫌な天気だ」
真島が言った。
車を停めて、煙草の箱を取り出した。
「クソ、空だ」

「ついてないな」
俺が言うと、
「ホント、今日はついてねーや」
真島は薄く笑った。

「別れ話はまたにしてくれ。煙草を買ってくる」
「真島」
真島は握りつぶした煙草の箱を俺に寄越した。

「なんだよ、ゴミを人に押し付けて・・・」

真島は笑いながら、エンジンを切ると、車の外に出た。そうして、サンルーフに手をやり、車の中を覗きこみながら、
「やるよ。俺のタカラモノだ」
と明るい声で言った。

その時、一台の車が滑るように近づいてきて、急に停まった。
中からバラバラと数人の黒ずくめの男たちが降りてきて、ライフルを構えた。
「!!」
振り向きざま銃を抜こうと懐に手をやった真島に、一斉にライフルの銃口が火を噴いた。

「真島!!」
俺の叫び声が、天にこだました。

射撃が終わると、男たちはまた車に戻り、車は走り去った。
俺はコンクリートの上に倒れた真島を助け起こし、その肩を揺さぶった。

「真島!死ぬな!死なないでくれ・・・!!」

「・・・あ・・・い・・・し、て・・・」
る、という最後の言葉は聞き取れなかった。

にわかに空が掻き曇り、雨が降り始めた。
雨が強くなり豪雨になっても、俺は真島を抱いたまま、動けないでいた。















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