「ユウキに、会ったそうだな」
真島が言った。
「いや、人違いだよ」
俺は答えた。

「そうか・・・俺はてっきり」
「てっきり、なんだ?俺が浮気しているとでも?」
「・・・お前がユウキに会ったと聞いて、別れ話かと思ったんだよ」

「別れ話の筈がないだろ・・・。もともとあんたとはつきあってなんかいない。俺の恋人は・・・あいつだけだ」

「お前・・・なかったことにする気か?全く、いい度胸だよ」
「なかったことにしたわけじゃない。違ったんだよ。それだけだ」
「お前なぁ・・・そんなに簡単にヤクザと縁が切れると思うのかよ」
真島は苦笑した。

「そうかもしれないな。けど、そんなことは問題じゃない」
「・・・愛してるんだ」
真島は唐突に言った。

「・・・・・・!お前は真島じゃないくせに!あいつじゃないくせに!」
俺がいきり立つと、真島は俺の肩を掴み、自分のほうに引き寄せた。

「神永、お前は寂しいんだ。その寂しさを俺で埋めようとしている。人はそれを恋と呼ぶんだ・・・」

「さすがヤクザだな。まやかしが巧い。あんたが・・・あいつだったらいいのに・・・」
そういいながらも俺は気づいた。
そのセリフは昔、真島が口にした口説き文句と同じだということを・・・。
「あんた・・・真島・・・真島なのか?」
信じられない思いで、真島を見つめ返したその時。

「・・・気づいたようだな」
ばーん!と突然クローゼットの扉が開くと結城さんが杖をついて現れた。
「あんな簡単な嘘も見抜けないようでは、この先D課でやっていけんぞ!」
「あ、貴方は!」

「ユウキ・・・さん・・・」
真島が目をむいた。
「ずっとラブホテルのクローゼットの中にいたんですかい?」

「まさかラブホテルのクローゼットの中に俺がいるわけが・・・という油断が隙を生むのだ」
結城さんはドヤ顔で、俺たちを見て笑った。
「まだまだ修行が足りないようだな、二人とも!」

D課。
後に警察内部に作った結城さんの組織は、日本のあらゆる難事件を解決してゆくことになる。
そこには俺、甘利、復帰した波多野に続いて、懐かしいメンバーが顔をそろえていた。
そして、子育てを終えて子供を保育園に預けた実井も、そこに加わることになった。

俺たちの夏が始まろうとしていた。
もちろん、結城さんとともに。
真島とは一緒に暮らし始めた。誰にも内緒で・・・。

俺の話は、これでおしまい。またね。













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