結城さんのことで、甘利と盛り上がっていたら、実井に怒られた。

「ちょっと!みのるが寝たばかりなんですから静かにしてください!」
「す、すまん」
あまりの剣幕に気圧されて、俺と甘利は小さくなった。

「すみません、先輩たち。実井はこのごろイライラしてて」
「波多野さん、誰のせいですか?」
きっとした目で、実井は波多野を睨んだ。
「全部俺が悪いです・・・」
「わかっていればいいんですよ!僕買い物してきますから、みのる、見ててくださいよ!」
実井は上着と財布を持つと、部屋を出て行った。

「すっごいカカア天下」
甘利が口笛を吹いた。
「すっかり尻に敷かれてるね」
と俺が言うと、
「勝手に警察辞めたこと、まだ怒ってて」
波多野はそういいながら頭を掻いた。
「え、でもお前稼いでるじゃん。ビル建つくらい」
「金しかないんですよね。結局みのるの面倒はほとんどやらせてて・・・あいつがキレるのも無理なくて」
「手伝えば?」
「パソコン見てないといけないから、株の動きは秒速ですからね、最近特に変で、損害がかさんでて」
目の下の濃いクマが全てを物語っている。
「一応休職扱いだから、いつでも戻れよ」
甘利がウインクした。

パトロールに戻りながら、
「休職扱いだって?」
「嘘だけどね。あーいっとけば、戻るでしょ」
「え、どうする気だ?」
「いざとなれば署長を脅して、復職させれば問題なし。署長の愛人ネタがまだ使えるな・・・」
「この悪党!」
俺は呆れた。

「それより、結城さんに連絡は取れないのか?」
「真島は連絡先も知らないらしい」
「随分信用されてるじゃないか」
「真島は、ユウキという名前の男が何者か知りたくて、随分調べたらしい。結局、総会屋だということしかわからなかった」
「それだけわかれば充分だ。大企業の株主総会に顔を出して、しらみつぶしに探せば・・・」
「それが、神出鬼没で、真島もとうとう見つけられなかったそうだ」
「へー、なるほど。結城さんらしいといえば、らしいか」

総会屋。結城さんは現世で、大企業さえも操る力を手に入れたのだろうか・・・?










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