「で、どうだったよ、真島は」

甘利は物憂げに長い指で前髪を払いながら、尋ねた。
「どうって・・・」
「あれに真珠とか入ってたか?いいのか、あれ」
「なにいってんだ。そんなもん、いれてないよ」
「なんだ、つまんねーな。詳しく聞きたいのに」

「それより、聞けよ。真島は、結城さんと知り合いなんだ」
「結城さん、て、あの結城さんか?」
「ああ。間違いないと思う」

真島を育てたのが結城さんだとすれば、記憶を奪い、真島を操っているのが結城さんだとすれば・・・。
「だったら、昨今の真島の躍進も、納得できるな」
「真島は大学出だ。インテリなんだよ」
「神永。今時のヤクザの幹部は大学くらいは出ているよ。別に特別じゃない」
「そうなのか?」

学歴なんか関係ない、実力の世界だと思っていたんだが。
「カタギとの境界線がどんどん曖昧になってるからな。真島はヤクザぶっているが、やってることはれっきとしたビジネスだし。子供レンタルはまあ、きわどい線だが、警察も目をつぶっている」
「港にでっかいビルを建てているみたいだ。もうすぐ完成するらしい」
「神永」
いなすように、甘利は言った。
「真島を尊敬するのはよせ。それでも奴はヤクザだよ。表のビジネスもあれこれやって、青年実業家みたいな風貌だが、いざとなれば人も殺す」
甘利は書類を差し出した。
みると、真島に関する履歴だった。
「暴力沙汰で人を殺しかけて、逮捕歴がある。2年の実刑をくらったらしい。まだ25の頃だ」
真島・・・。
すぐに熱くなるところは、相変わらずなんだな。
「真島は昔から、そうだった」
「結城さんが、真島を使ってなにをしようとしてるのか、気になるな」
甘利が考えるように目を細めた。
「なんで、俺たちに接触してこないんだろう。生きているなら・・・」
俺や甘利、波多野が警官になったのは、ひとえに結城さんに遭いたかったからだ。
警官なら、裏の情報にアクセスして、思う存分人探しが出来る。
「真島は、エサなのかもな。神永、お前をおびき寄せる為の・・・」

結城さんが俺たちを探す為に真島を利用した?
結城さんもまた、俺たちを探しているのだろうか・・・。

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