「布団は一組しかない」
「俺はコタツで寝るよ」
「風邪ひかないか?」
「平気。ネットカフェよりはましだ」
それはそうだが。

一応予備の毛布を渡しておいて、俺は隣の部屋に移動した。

「福本」
隣の部屋から声がする。
「なんだ」
「なんでもない。おやすみ」
「おやすみ」
少し心が温かくなった。

朝、起きてみると、波多野は果たして、いた。
もしかしたら、いなくなっているかもしれないと思ったが、それはなかった。
「起きろ」
「ん・・・朝か・・・」
「会社に行く。お前も一緒に来るんだ」
「え?な、なんで」
波多野はぼんやりしている。
「凄腕のハッカーなんだろ?役に立ちそうだ。転生した以上、結城さんの役に立て」
俺はスーツに着替えると、パンを焼いてコーヒーを入れた。
「早く食え。行くぞ」
「うう〜会社って苦手なんだよな」
「大丈夫だ。D機関だから」
「余計嫌だ」
波多野は情けない顔をした。

俺のスーツは波多野には合わない。波多野は昨日と同じパーカーとジーンズだが、まあ、仕方がない。
俺は波多野を連れて出勤した。

「波多野か。うちで働きたいのか」
「そうです。役に立つでしょう。主に情報処理分野で」
俺が紹介すると、波多野は嫌々頭を下げた。
「それは頼もしいな。わが社も他国からサイバー攻撃を受けているからな。それに対処できれば、展望も違ってくる」
「善処します」
波多野は小さな声で言った。







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