<もしも、蒲生次郎が実井より一枚上手だったら・・・>


料亭から一台の車がでた。
森島を乗せた蒲生次郎の運転する車だ。
蒲生は、風戸に森島を殺すように命令されている。
森島は眠り薬を飲まされて、酩酊している様子だ。
簡単な任務だ。
蒲生はハンドルを切った。


崖の上に車を停めると、蒲生は後ろを振り返った。
森島が眠っている。寝顔は、その辺の女よりもよほど美しい。
抜けるような白い肌に、紅を引いたような赤い唇。睫が長く、頬に影を差す。
ちょっと、眼をそばだてたくなるような美貌だ。
蒲生はシートを倒し、後部座席に移動した。
森島の顔に顔を重ねる。
「・・・んっ・・・」
強引な接吻に、森島が顔をしかめた。
「どうせなら、もう少し寝たふりを続けたらどうですか?坊や」
「・・・・・・なんのことです?ここは一体・・・」
「誤魔化しても無駄ですよ。貴方が眠り薬を入れた袋を腕に提げているのを、さっき、身体を触った時に確認しました。同じ手を使うとはな」
気づかれていた・・・。
森島は唇を噛んだ。

「僕をどうする気です?」
「どうするって・・・そりゃあ、送り狼という言葉があるでしょう?」
蒲生は耳元で囁いた。

「たっぷり可愛がってあげますから、覚悟してください、森島君」
蒲生はネクタイを緩めながら、森島の身体に圧し掛かった。

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