僕は風呂を出た後、庭に戻った。

哲二「あの、お風呂、ありがとうございました」
福本「神永と波多野と実井は仕事でいないから、今日はもうあがっていいよ」
哲二「すみません。火の始末もしてもらって」
福本「これ、結城さんからだ」

福本さんは袋に入った大判焼きをくれた。

福本「家に持って帰っていいよ」
哲二「ありがとうございます。妹が喜びます」

あれから、福本さんは僕に普通に親切にしてくれる。
仮面をつけていると思う。
だけど、それももう、気にならない・・・。
福本さんは、十分、僕にくれるものをくれたから。

僕が庭を回って、外に出ようとすると、声が聞こえた。
田崎「だから誤解だって」
甘利「誤解?」
田崎「僕が三好に未練があるなんてことは、ないって」

痴話げんかだ・・・。
田崎さんは三好さんが好きだったのか。
三好さんは、社員の中でもずば抜けてきれいな人だからな・・・。
言葉はとげとげしくて、僕はちょっと苦手だけど。

急に窓が閉まったので、声はそれきり聞こえなくなった。
僕は家路を急いだ。

美夜「お兄ちゃん、おかえり。わぁ、お土産?」
哲二「大判焼きだよ。福本さんがくれたんだ」
美夜「おいしそう・・・。お茶いれるね」

美夜の無邪気な笑顔を見ていると、また明日も頑張ろうと思う。
そう決意して、僕は大判焼きを頬張った。




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