「記憶が戻ったそうだな」

「ああ、おかげさまで。お前にも世話になったな、福本」
「いや・・・俺はなにも」
言いながら、福本は白い薔薇の花束を押し付けた。
「退院祝いだ。くれてやる」
「・・・ありがとう。綺麗だね」

「操っているのはカードじゃない、お前の心・・・か」
「なに?何か言った?」
「なんでもないよ。良かったな大将。楽園ボケが治って」
「ああ。お許しがでたからな」


昨日、結城が病室まで来て、そろそろ退院しろといったのだ。
晴れて、謹慎を解かれるわけだ。

「奴と仲直りしたのに、誰に向かってふりを続けているのだ?」
結城は皮肉に口元をゆがめた。
「貴様、福本まで手玉に取るつもりか・・・?」

「皮肉は結構ですよ。傷に響きます」

田崎は答えた。

「味方の攻撃で怪我をする馬鹿につける薬はない。入院費用は給料から引いておく。今後半年の間にな」
半年間ただ働きということか。
田崎の顔色は曇った。

「心配するな、ただ働きは貴様だけじゃない・・・連帯責任だ」
結城中佐はにやりとした。



「半年間無給か・・・」
甘利がぼやいた。
「ごめん。俺のために」

「いいさ、お前と一緒なら」
甘利は田崎の身体を抱きよせて、その唇に唇を重ねた。








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