真島がキスをした相手、あれは一体誰なんだ・・・!

俺は嫉妬で気が狂いそうだった。
真島の奴、真面目に働いていると思っていたら、職場で浮気していたのか。
裏切られた思いと、嫉妬と、怒りで、俺は軽く眩暈を起こしそうになりながら、真島がキスした相手の後をつけた。

男は、店を出ると、口笛を吹きながら広場を抜けて、反対側のスラムに入っていった。
後をつけると、ちょうど、ビルの地下の階段を降りる後姿が見えた。
看板は出ていないが、バーかなにかだろう。
俺は迷わず後を追って、階段を降りた。

扉を開けると、中はパブになっていた。
予想外に広く、また、人も多い。
中を見回すと、さっきの男がカウンターに座っていた。
俺はひとつ開けた席に座り、ウイスキーを頼んだ。

男がちらりとこっちを見る。男、というよりも、まだ学生のような幼さだ。
「やあ、この店は初めて?」
都合よく、男から声をかけてきた。
「まあね。実は君をつけてきたんだ」
「僕を?どうして」
「好みのタイプだったから」
皮肉なことに、真島の講義を真面目に受けていた成果が出た。
すんなりとナンパに入れる。
男は笑って、
「ほんと?偶然だね。僕も君みたいなタイプ、好みだよ」
囁くように言う。青い眼が、何を考えているのかわからない感じがする。
「それは好かった。口説く手間が省ける」
俺も笑いかけた。

しばらく会話して、いろんなことがわかった。
男は学生で、名前はエドワード・ノート。まだ23歳だということだ。近くの大学に通っている。恐らく名門だろう。
ラフに気崩してはいるが、明らかに高級なシャツとスラックス。高級な腕時計。磨かれた靴。スラムのパブにいることが不思議なくらいだ。
趣味はテニスとクリケット観戦。そして、ビールが好き。
真島とはどういう関係なんだ。
「君を見かけたのは、確かフランス料理の店で・・・」
「<ワールド・エンド>?たまに行くんだよ。なかなかいけてるよ、あそこは」
エドワードは無邪気に薦めた。
「いけてるんだ?でも、シェフが日本人だろ?大丈夫なのか」
「ああ・・・」
エドワードは意味ありげに口をつぐんで、
「君、マジマに興味があるの?彼、セクシーだもんね」
と言った。
「違うよ、誤解だ」
「隠さなくてもいいよ。ねえ、席を移さない?奥にふたりだけになれるプライベート席があるんだ。彼について知りたいんだろ?」






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