寮に帰ると、階段を上がり、葛西の部屋に葛西を連れて行き、ベッドに寝かせた。

「全く・・・」
葛西は赤い顔のまま死んだように眠っている。
うっすらと開かれた朱い唇が、誘惑するように濡れている。

「葛西・・・誘っているのか」
反応はない。

中瀬は、瀬尾とどこかへ消えた。当分戻らないだろう。
いまは、葛西とふたりきりだ。以前と同じ、ふたりきり・・・。

葛西の勝気そうな顔が、すぐそばにある。
その頬に触れた。起きる気配はない。
「葛西」
囁いてみた。

キスの途中で、葛西は目を覚ました。
「なっ・・・宗像・・・」
はじかれるように身体を起こして、後ずさる。シャツの前ははだけている。
「なにを考えているんだ・・・寝こみを襲うなんて」
「誘ってたんだろ?寝たふりをして」
「馬鹿な・・・僕が貴様を誘うはずないだろう」
「どうかな」
宗像は呟いて、壁に手を突くと、不敵に笑った。
「お前は誘うのが得意だからな」

再び、手首を取られて、唇を塞がれた。
「ん・・・ううっ・・・」
葛西は抵抗するが、凄い力で押さえ込まれている。
やっとのことで、息をつくと、噛み付くように言った。
「やめろ!こんなことして、どうなるっていうんだ・・・酔ってるのか?」
「酔ってないよ。貴様と違って大して飲んでない。それとも、酔ってるといったほうが興奮するのか?」
「宗像」
細い目を吊り上げて、葛西は相手を睨んだ。

「何の為に部屋を替わったと思ってるんだ?」
「俺が望んだわけじゃない・・・俺はお前がいないと・・・だめなんだ」
宗像は、葛西を引き寄せると、胸の中に抱きこんだ。
小柄な葛西は、苦しそうに、喘いだ。
「はなせ」
「離さない」
このまま時間がとまればいい。







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