飲みすぎた葛西を宗像が、飲みすぎた中瀬を瀬尾が、それぞれ送っていった。

「こんなになるまで飲むなんて、初めてじゃないか?」
背負った葛西に話しかけるが、葛西は答えない。
眠っているのだった。
「全く・・・無防備というかなんというか・・・」
いっそこのまま寮に帰るよりもどこかへ連れ込みたいが・・・。
「いかん」
自分の妄想を振り切り、宗像は葛西を背負いなおした。


「こんなになるまで飲むなんて、大丈夫ですか?中瀬さん」
背負った中瀬に話しかけるが、中瀬は答えない。
眠っているのだった。
「全く・・・無防備というかなんというか・・・美味しいというか・・・」
いっそこのままどこかへ連れ込んでしまおう。
瀬尾に迷いはなかった。
瀬尾は、路地裏の小さな安宿の階段を上り始めた。

小さな部屋に布団が並んで敷いてある。備え付けの机と、座布団があるだけの室内を見回して、瀬尾はため息をついた。
こんな場所に縁があるとは思わなかったが、今日はこうして、中瀬と一緒に来ることができた。俺も成長したな・・・いや、出世したんだ。
中瀬の眼鏡を外して、机に載せた。
眼鏡を外すと一層幼く見える顔は、実井にも波多野にも似ている。
不思議な気がした。

瀬尾も結構飲んでいたが、酒には強いほうだ。酔っていた、という言い訳はできない。
だが、こんな大胆なことができてしまったからには、やはり酔っているのだろうか。
自問自答していると、中瀬が目を覚ました。
瀬尾ははっとして、中瀬を見る。
「まぶしい」
中瀬がそういうので、慌てて電気を小さくする。部屋は一気に暗くなった。
「中瀬さん」
瀬尾は囁いた。
「俺、中瀬さんからご褒美が欲しいんです・・・どうしても」
「ご褒美って?ただ酒飲んだだろう」
「そんなんじゃなくて、もっと・・・いいものを」
「もっといいもの?」
瀬尾は這うようにして、中瀬の側にいった。
「僕・・・なんにも持ってやいないぜ?」
「いえ。貴方は持っています」
瀬尾は、中瀬の上にまたがった。中瀬は、
「なに?なんか近いけど」

「目を閉じててください。すぐに終わります」
瀬尾は、そう囁いた。









inserted by FC2 system