ドアをノックする音がした。
「平賀、起きてるか?」
「ロベルト?どうしたんですか、こんな時間に」
平賀はロベルトを招き入れた。
「生憎水しかありませんが」
「ありがとう」
何か話があるのだろうと、平賀は椅子を勧めた。

「不審に思わないのか?」
「なにがですか」
「こんな時間に尋ねてきた男を、部屋に通すのか?」
平賀は水をロベルトの前において、
「おかしいですか?私が貴方を部屋に通すことが」
「ああ、少しは警戒しろ」
「警戒?」
「そうやって幼子みたいに分からない顔をされると、僕もどうしていいかわからない」
「なにを・・・おっしゃっているのか・・・」
「平賀」
ロベルトの手が平賀の手首を捉えた。
「僕・・・いや、俺のことをどう思う」

「貴方を大切に思っていますよ。家族のように」
平賀はロベルトに掴まれた手首を見ながら答えた。
「家族・・・」
「ロベルト、痛いです」
ロベルトは立ち上がり、平賀の手首を引いた。
平賀はあっさりとロベルトの胸に収まった。厚い胸板に頬が当たり、平賀はわずかに赤面した。
「それでは、いけませんか」
平賀は囁いた。
「家族と言われてしまえば・・・」
手を出しにくくなる。
ロベルトは平賀の真っ直ぐに切りそろえられた髪に頬をつけた。

「君ははぐらかすのがうまい、さすがだよ」











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