「はい。甘利。チョコレート」
「えっ?くれるの?お前が?」
「なに驚いてるの」
「だってお前、そーゆータイプじゃないじゃん」
「今年はいろいろあったからね」
田崎はぺろりと舌を出した。

「謝罪ってことか・・・」
複雑な表情で受け取る甘利。
「深読みしないでよ。スキでしょう、チョコレート」
「嫌いじゃないけど・・・」


「小田切。これ」
「なんだ?福本」
リボンのかけられた包みを受け取ると、小田切は不思議そうな顔をした。
「ほら、あれだ。バレンタインだから」
「え?ああ・・・そうか。くれるのか?ありがとう」
「チョコは嫌いか?」
「得意ではないけど、頂くよ」
小田切はにっこりした。

執務室で結城は後悔していた。
受け取るべきだったか・・・。しかし、ハードボイルドな俺のイメージが・・・。
超絶ナルシストの結城は、自分のイメージがなにより大事だった。
三好の泣き顔は嫌いではない。
ただ、それを慰めるのが神永だと思うと・・・腹が立つ。
一緒に食べようだと?ふざけるな・・・。

「バレンタインだと?くだらん」

結城は煙草を銜えた。そうして、火をつけると、煙を吐き出した。

食べなくても受け取って、引き出しにしまっておけばよかった。

真っ黒な孤独が、結城を包み始めた。



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