取引の相手方は遅れて到着した。

雰囲気からして、中国人マフィアだ。
ボスらしき男が、前に進み出た。
「ブツは持ってきたか」
「ああ。確認してくれ」

金塊をひとつ取り上げて、男は丹念に眺めた。
「間違いない。本物ね」
「そちらも見せてくれ」
「いいだろう。これだ」
差し出されたアタッシュケースを開くと、中は白い粉入りの袋だ。
堂本は袋を破くと、それをわずかに舐めて、
「上物だ。取引成立だ」
と言った。

「そこまでだ!全員手を挙げろ!」
神永が、堂本に銃口を向けて、叫んだ。
俺は神永をフォローすべく、中国人ボスに狙いを定める。

周りにいる黒ずくめの男たちは、一斉に銃口を俺と神永に向けた。
「待て。銃を降ろせ」
堂本が一括すると、男たちは銃を降ろした。

「見ない顔だな・・・いや、そっちには見覚えがある。神永、だな」
堂本がゆっくりと言った。
「真島のイロか。・・・俺に何のようだ?」
「真島をやったのは貴様だろう!?堂本!」
神永の銃口はぴたりと堂本を狙っている。
「・・・証拠でもあんのか」
「貴様の部下に聞いたんだよ!野崎って男だ!」
「野崎・・・?そんな男は知らんな」
「とぼけるな!」


「銃を降ろせ。お前、人を殺したことなんかねーんだろう?女の子みたいなツラしてよお・・・真島みたいなカスには勿体無いぜ・・・」
堂本がサングラスを外した。左頬の傷は額まで繋がっていて、左目は白濁していた。
「真島は優しくしてくれたか?どうせ建築中のビルでも見せて、あれは俺のだとかほざいたんだろう?あいつのいつもの手だ・・・案外女はひっかかるがな・・・お前もその口か?」
神永の顔が悔しそうに歪んだ。
「俺と心中するか?その銃が火を吹いた途端、お前たちも蜂の巣になるがな・・・」
堂本は肩がこる、といった風に、太い首をぐるぐると回した。




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