「待てよ」
神永は俺の腕を掴んだ。
「俺なりに、真島の事を調べたんだ。奴を殺したのは、同じヤクザ組織の内部の人間だ。真島の出世を妬んだのだろう・・・」
内部抗争か。
ありがちだな。
「まあ、真島は敵も味方も多そうだったからな」
「俺が目星をつけたのは、ナンバー2の堂本っていう男だ。顔に傷があって、大男だ。そいつが港の倉庫で取引をするらしい。一緒に来てくれないか」
「俺が?」
ヤクザ同士の殺し合いに、警察は興味がない。
いくらでも殺しあって結構、というわけだ。
だから、そんな事件を追ったところで、手柄にはならない。
「何で俺が、真島の敵討ちみたいなこと・・・」
「真島はお前のことも高く買っていたよ、あいつは骨があるって」
「おだててもだめだ」
「甘利」
「牛丼おごれ」
俺の条件に、神永は嬉しそうに頷いた。
「ああ、卵もつけるよ」

別に断っても良かったが、神永を一人で行かせるのは心配だった。
取引の現場というのは何が起こってもおかしくないからな・・・。
防弾チョッキを着て、銃を携帯する。

港は人気がなかった。
車を隠して、倉庫に忍び込む。時計を見ると、3時を回ったところだ。
「本当にここなのか?」
「確かだ。これは内部情報だ」
「密告する奴がいたのか」
「ヤクザ同士の絆なんて、案外脆いもんだ。ちょっと脅せば・・・」
神永らしくないことを言って、
「また巻き込んだな。すまない」
「今更かよ。牛丼大盛りつゆだくな」
「本当、感謝してるって☆」
投げキッスかよ。ったく、人の気持ちを弄んで・・・。

「おでましになった」
神永が小声で囁いた。見ると、数人の黒ずくめの男たちが、音も立てずに現れた。
ああ、空気で分かる。こいつら、プロだ。
遅れで、巨漢というべき大男がのっそりと現れた。左頬に傷。堂本だろう。
部下がアタッシュケースを持っている。こういう現場は相変わらずの現金取引か。
レトロだな。
そう思っていると、堂本がアタッシュケースを開けた。
中には、まばゆい金塊が光っていた。

「金塊かよ・・・」
レトロだ。俺は神永に目配せをした。







inserted by FC2 system