「甘利先輩、元気ないっすね」

「そ、そうか?ははは・・・まあ、いろいろあってな」

「真島さんのこと聞きましたよ。大変でしたね」

「ああ、真島・・・俺は別に、関係ないけどな」

いつものように波多野の家で時間を潰す。
「今日はひとりですか?神永さんは?」
恭子ちゃんが口を挟んだ。
「いや、神永は別の現場に行ってて」
「喧嘩でもしたんですか?」
「そういうんじゃないんだけどね」
「神永さん、落ち込んでるんですか?」
なにもしらない恭子ちゃんはそう尋ねた。

「みのるは元気そうだな」
「元気ですよ。昨日お宮参りに行ってきたんです。写真見ますか?」
携帯の写真を見せてもらうと、着物を着た恭子ちゃんと、スーツの波多野と、赤ん坊が映っていた。
「本物の親子みたいだな・・・」
「でしょ。スタジオで借りたんですけどね」
恭子ちゃんが少し自慢げに言った。
「着物似合うね、恭子ちゃん」
「波多野さんが着ろって煩くて。僕はどっちでもよかったんですけど」
赤ん坊はに一と笑った。
「いい笑顔じゃん」
俺が言うと、
「でしょ。最近笑うんですよ。言葉もわかるみたいで」
恭子ちゃんの嬉しそうな顔は、正直、意外だ。

「そいや、子供レンタルはどうなるの?真島いなくて」
「なんでも、一応ちゃんとした組織になっていて、代わりはきくらしいのです。いままでどおりでいいみたいです」
「へえ、しっかりしてんな」
「身の危険はいつでもあるから、かえってしっかりしてるんでしょうね」
恭子ちゃんは、小首をかしげた。

神永は、落ち込んでいるか?答えはいいえ、だ。
「甘利」
警察署に帰ると、神永が近寄ってきた。
いつもどおりで、いつも以上に明るい神永が、俺には疎ましかった。
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