「結局なにもせず、か」
甘利が呆れている。
「だって・・・あんなに喜んでくれて・・・」
「時間だ。帰ろう」
甘利に連れられて、城に戻った。

「そこにいろよ」
甘利の指示でカーテンの陰に隠れる。
何の真似だろう。

「帰ったのか。三好は?」
「部屋に戻った」
田崎だ。
甘利は、田崎の顎を持ち上げて、その唇を吸った。

なんだと?
まさか・・・。
甘利はちらりとこちらを一瞥してから、
「今日は獲物がなくてね。お前の血を分けてくれ」
「どうせ三好のを吸ったんだろ」
田崎の不機嫌な声。
「吸ってないよ」
甘利は嘘をついて、田崎を床に押し倒した。

そのまま田崎の首下に顔を埋める。
「痛っ・・・噛むなよ」
田崎の声。それが、だんだん妖しげな喘ぎ声になった。
「あっ・・・はぁ・・・はぁ・・・あぁ・・・」
その声を聴いていると、さっき甘利に吸われた首筋が熱を帯びて、体から力が抜ける。
足ががくがくした。

「待て。誰かいる」
田崎の鋭い声。
甘利を押しやって、首元を直すと、カーテンに近づいてきた。

バッと、カーテンを開けると、僕と目が合った。
「三好・・・」
田崎は後ろを振り返り、不機嫌な声で、
「どういうつもりだよ、甘利。俺は見世物じゃない」
と、甘利を責めた。





inserted by FC2 system