「ヴァンパイアの弱点は、十字架ニンニク日の光、だ。特に夜明けには注意しろよ。あっという間に灰になる」
「結城さんに会いたい」
「今は会えない」
柩から立ち上がると、干からびた薔薇の花が落ちた。
一体どれだけ眠っていたのだろう。
僕は不審に思いながら、甘利の後をついていった。

甘利に渡されたタキシードを着てマントを羽織るとヴァンパイアらしくなった。
「狩りにでかけよう。いい月夜だ」
甘利が言った。

「その前に練習が必要だな。見本を見せてやるよ」
「あっ」
甘利はいきなり僕の首筋に噛みついた。

ジュルジュルッと卑猥な音を立てて、僕の血を吸い上げる。
ああ・・・眩暈がする・・・なんて気持ちいいんだ・・・
ふわふわと中に舞う羽毛みたいな気分だ・・・

足が震えて立っていられなくなった。
「おっと」
甘利に支えられて、僕は何とか踏みとどまった。
「いいだろ?逝く感じ」
甘利が囁いた。

「さて、人間を探さないとな、生きのいいのを」
「あっ、軍人がいますよ」
「なんだ佐久間か。好みじゃないな・・・」
「そうですか?美味しそうですけど・・・」
「あんなのがタイプなのか?」
「ええ、いきます」
僕は迷わず佐久間の前に降り立った。

「三好!?貴様は死んだ筈・・・」
「ええまあ」
「生きていたのか!?」
あんまり佐久間が驚きかつ喜んだので、手を出しにくくなった。
「痛いですよ・・・」
「三好〜☆」
佐久間は大袈裟に僕を抱きしめたので、あやうく窒息しそうになる。
「離してください・・・泣いて・・・?」
「三好〜☆」

佐久間は感涙に咽んでいる。佐久間は本当に僕のことが好きだな、とぼんやりと思った。










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