最初は自分がどこにいるのかわからなかった・・・そのうち目が慣れて、暗闇でも見えるようになった。四方を狭い壁に囲まれている。手触りは木だ。

これはどうやら柩、柩の中に閉じ込められたらしい・・・。

そうだ、ベルリンに戻る列車で事故に遭い、僕は死んだのだ。
なぜ生きてる?
柩の蓋は重くて持ち上がらない。このまま窒息するのか・・・。
「誰か・・・」
息をするのも苦しくて、声が出ない。
「ゆうきさ」
結城さん結城さん結城さん!
僕は魔王を思い浮かべて、助けを呼んだ。
結城さん!僕を助けて!

願いが通じたのか、柩の蓋がずれて、光が差し込んだ。
「三好」
えっ、その声は甘利か?
光はカンテラの灯りだった。
覗いた顔は確かに甘利だ。
「大丈夫か?」
「ああ」
蓋が開いて、僕は助け起こされた。
「その格好は?」
甘利は黒マントに身を包んでいた。
「三好、貴様は死んだ。でも、結城さんが甦らした。ヴァンパイアとして」
「ヴァンパイア?」

「死ぬ前に結城さんは吸血していたんだ。貴様は死ねなかったんだ」
「悪い冗談だ」
「まあ、信じろとゆうほうが無理かもな」
だが甘利の目は赤い。血のように。
八重歯のような牙まである。
僕は自分の歯を触った。確かに牙のようなものがある。指先から血が噴出した。

「おっと気をつけて」
甘利は僕の手を取り、指先を舐めた。
「なにをするんだ」
「別に、舐めただけ」
甘利はニヤリとした。




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