実際、何も起こらなかった。

「神永さん、どうなってるんです?」
と実井。
「普通のチョコレートだった」
と小田切。
「・・・俺もだ」
と福本。
「・・・確かに」
と田崎。

神永は、田崎をチラッと見て、
「田崎、貴様食べなかっただろう?袖口にチョコがついてる」
と言った。

「ずるしたんですか?田崎さん」
と実井。
「どうなんだ。田崎」
と小田切。
「・・・ちょっと待て、田崎のチョコに自白剤が入ってたのか?神永」
と福本。

「まあ、待て。やり直しだ。お互い隣にいる人にチョコを食べさせる。に、ルール変更だ」
と神永。

チョコレートが配られた。
メンバーは仕方なく、自分の左隣にいる人に、それぞれチョコレートを食べさせた。

5分たった。お互いに顔を見合わせる。
突然、実井ががっくりと項垂れて、ぼそぼそと語り始めた。

「ゆうべ・・・僕は、あるものを見たんだ・・・田崎さんが出て行った後・・・甘利さんが後を追うようにして・・・出て行って・・・」

「ちょっと待ってくれ」
田崎は焦った。なんだかとんでもないことを言われそうな気がする。

「止めるなよ、田崎」
神永がニヤニヤしながら、田崎を制した。

その顔を見て、田崎は気づいた。こいつら、グルだ。
このゲームの<ジョーカー>を引かされたのは最初から俺だったんだ・・・。

田崎は神永の襟首を掴んだ。

「貴様、自白剤なんて嘘だろう?最初から俺が目当てだったんだな」
「ばれたか」
神永は、面白そうに顔をゆがめて、

「昨日帰宅したら、貴様と甘利が一緒にでてったって聞いたもんだからな。もしかしたらなにか面白いことでもあったんじゃないかと、カマをかけたってわけだ」

「で、なにがあったんだ?」
と小田切。
「朝まで飲んでたのか?」
と福本。
「それだけじゃないよね?」
と、さっきまで首を項垂れていた実井が、急に顔をあげて、目をらんらんとさせて聞いてくる。

田崎は頭が痛くなった。
こいつら、世界をまたにかけるスパイの癖に・・・幼稚すぎる。

「まあ、告白なんか聞かなくても察しはつくね。さっきの甘利さんの殺気で」
神永は言って、片目でウインクをした。















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