「寂しい顔をしているな」

戸口に秋元が立っていた。
「ノックくらいしろ。気配も消すな」
俺は嫌な顔をした。

「葛西は無事に旅立ったんだろう?ゆうべは一緒だったのか」
「・・・まあな」
「へえ」
意外そうに、秋元は目を吊り上げた。
「それで、どうだった?」
「どうって・・・なにがだよ」
「好かった?葛西を抱いて」
「貴様・・・ふざけてるのか」
「いたって真面目だよ。気になるんだ。長い片思いの果てに想いが通じたんだろう?好かったじゃないか」
秋元は軽い感じでそう言って、腕を組んだ。


長い片思いの果てに、か。まあ、他人から見ても俺の気持ちは一目瞭然だったのだろう。自分では隠していたつもりだったが。

「それで?葛西がいなくなって寂しい?」

葛西のベッドはからっぽだ。シーツも引き剥がしてある。
俺はそれを横目で見て、
「まあな。実際、耐え難い」
と答えた。
しばらく会えない、どころか、いつ会えるかもわからない。
1年、3年・・・いや、戻るのはいつになるのか。
また、無事に戻ってくるのかもわからないのだ。

「俺でよければ慰めるけど?」
秋元は言った。







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