「宗像と寝たの?」

唐突に聞かれて、秋元は苦笑した。
「なに言ってるんだ?俺が?」
「好きなんだろ。宗像のことが」
中瀬は、いたって真面目な顔で、そう決め付けた。

「スキって・・・なんで?」
「見てればわかるよ」
中瀬は、眼鏡をかけた瞳で、秋元に言った。
「部屋替わったのだって、そういう理由だろ?」
「あれは、葛西が困ってたからだよ。別に俺に下心なんて」

「認めないんだ」
中瀬の目が冷たくなった。

「ないものはない。実際、なにもなかったし。宗像は葛西とできたんじゃないか?夕べふたりとも戻らなかったな」
「気にしてるじゃんか」
「そりゃ・・・気にはなるけど・・・」
秋元は、優雅な仕草で前髪をかきあげて、
「お前こそ、瀬尾さんとどうなんだよ」
と尋ねた。
「・・・誰から聞いたんだ」
中瀬は赤くなった。
「瀬尾さんが自分でしゃべってたよ。もう少しでお前が身体を許してくれるところだったのに、ベルトのカメラが邪魔で、おじゃんになったって・・・」
「あいつ・・・あの、おしゃべり・・・」
中瀬の握った拳がぷるぷると震えた。

「その気がないなら、中途半端なマネはよせよ」
「関係ないだろう。貴様に」
「そりゃそうだけど、気にはなる。お前だって好きな人くらいいるんだろうに」
何気なく言った言葉に、中瀬は今度は青ざめた。
「中瀬?」
「そんなものいないよ。別に僕は瀬尾さんに抱かれたっていいんだ。少なくとも、瀬尾さんは・・・瀬尾さんは僕を必要としてくれるからね」

吐き捨てるように言って、中瀬は扉を開けて出て行った。







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