「なにをくだらないことを言ってるんですか。そこ、どいてください」

僕は冷たく言い放ち、赤ん坊をバスタオルにくるむと、抱えあげた。
「次はお前が入れよ。洗ってやるから」
「冗談でしょう?」
呆れた。
赤ん坊がいるというのに、波多野さんはすけべな妄想で一杯だ。

「ほら、このアパート6畳しかないし、風呂ないから洗いっことかできないじゃん?」
「できなくて結構です!なにくだらないことを・・・」

僕は、バスタオルで赤ん坊を拭きながら、ふと、服が一枚しかないことに気づいた。
着替えがない・・・。
「それより、着替えがありませんよ」
「そうだな。俺のTシャツ着せとけば?」
仕方がない。汚れた肌着よりはいいだろう。
僕は波多野さんのTシャツを取り出すと、赤ん坊をくるんだ。

しばらくすると、赤ん坊は眠り始めた。
「ミルクは3時間おきだそうですから、次の時間は12時ですね」
「3時間おき?めんどくせぇな〜」
「なに言ってるんですか?自分が連れてきたくせに」
言い方がとげとげしくなる。
僕こそ、関係ないのに巻き込まれて、いい面の皮だ。
「それはそうだけど・・・3時間か」
波多野さんの顔が近づいてきた。
「なんです?」
「3時間あればエッチできるな」
「なにいってるんです?赤ん坊が起きるじゃないですか」
「お前が声をたてなきゃいいんだろ?」
「ふっ、ふざけないでください!」
「でけー声出すなよ。赤ん坊が起きるだろ」
波多野さんは、僕の口を塞ぎ、低い声で囁いた。
「声を立てるなよ、実井」

波多野さんの手が、するりと僕の背中からボトムの中に滑り落ちた。


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