狭い部屋に赤ん坊が一人いるだけで、テレビもつけられなきゃ、大きな声で会話するのも、トイレの水を流すのも、何だか遠慮してしまう。
赤ん坊が起きるからだ。
さっき寝たとこなんだから、できれば三時間は眠っていて欲しい。

そーっと、首の下になっていた腕を抜くと、赤ん坊がもぞもぞしはじめた。
一人、部屋の中でびくつく。
そうして、ようやく赤ん坊から身体をはなしてソファにもたれると、突然「ぴんぽーん♪」と玄関のチャイムが鳴った。

慌てて出ると、先ほどコンビニに買い物に行った波多野さんだ。
ドアを開けて睨みつけた。

「なんで鳴らすんですか?」
「あー、悪い。鍵忘れた」
「だったら開いたままだとは思わないんですか!?」
「あ、そっかぁ〜♪」
恨み言を言っていると、背後で赤ん坊のけたたましい泣き声が聞こえた。
「お、起きたな?」
「貴方が起こしたんでしょう!?」

「そういきりたつなって。ほら、ちゃんとオムツも買って来たからさ♪」
見ると、思い切り1歳児用のオムツだ。
「波多野さん・・・この子はまだ新生児ですよ?どうみても生まれたばかりだ。まだ一ヶ月もたっていないでしょう。これ、大きいんですけど!」
「え?オムツにサイズなんかあるのか!?」
「ありますよ。交換してきてください。あ、ついでに牛乳も買ってきてくださいね!」
そういって波多野さんをドアの外へ追い出した。
「鍵!あけておきますから、チャイム鳴らさないでくださいね!」

数分後、肩で息を切らしながら、波多野さんが戻ってきた。
「か・・・買って来たぞ。マッハで」
「ごくろうさま。ちゃんとサイズを見たんですか?」
「見たよ。ホラ」
今度はちゃんと新生児用のパンパースだ。僕はほっとして、
「とりあえず、おむつからいきますか」
先ほどネットで調べたオムツの替え方を脳内でシュミレーションしながら、赤ん坊のオムツを外した。

ぴゅ〜☆
オムツを外した途端、赤ん坊はオシッコをした。
「じ・・・実井・・・だいじょうぶか・・・?」
「なんでもないですよ。少し、顎にかかりましたけどね!」
とりあえず、赤ん坊は男の子だということがわかったのだった・・・。












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