「神永さんて、真島さんと知り合いなの?」

何気なく尋ねた僕の言葉に、波多野さんは顔をしかめた。
「みたいだな。警官とヤクザ・・・裏の世界じゃ友達みたいなもんなんだよ」
「トモダチ」
僕は神永さんの正義感に溢れる青年らしい顔を思い浮かべた。
とても、ヤクザと繋がっているようには見えないけど・・・。

その時、傘をさした保母が、建物の中から出てきた。
「あの、すいません。警察の方ですか?」
「ええ、そうです」
「なにか、事件でも・・・?」
「いえ、そういうわけじゃありません。見回りです」
波多野さんが警察官の口調で答えると、
「そうですか。雨の中、ご苦労様です。良かったらお茶でも・・・」
まだ若い保母は頬を染めた。

この保母、波多野さんに気があるのかな。
そう思うと気が気じゃない。
僕は波多野さんに寄り添うようにして、ついていった。

動物の絵が飾られた園長室で、僕と波多野さんはお茶を飲んだ。
驚いたことに、そのまだ若い保母は、園長だった。

「全部、真島さんから預かっている子供たちです」
真島と知り合いだというと、保母は嬉しそうにそう話した。
「保母は何人くらい見えるんですか」
「3人で交代しています。あと、給食のおばさんがいます」
「子供は30人くらいいますね」
「はい。多いときは50人を超えます」
「多いとき?」
「子供は増えるんです。真島さんが次々と連れてくるんです。でも、嫁ぎ先・・・里親が決まればいなくなります。その繰り返しですわ」
ふーん。
そんなに簡単に里親が決まるものなのか。
「じゃあ、赤ん坊なんかは・・・」
「キララちゃんですか?すぐに決まると思いますわ」
そうか・・・。
ちょっとだけ寂しく思いながら、僕はお茶を飲んだ。

「あの、甘利さんとはお知り合いですか?」
唐突に、保母が尋ねた。
「え?甘利先輩・・・ですか?ええ、まあ・・・」
「このあいだラインを交換して・・・返信がないものですから・・・」
なにをやっているんだ?甘利先輩!
「きっと忙しいのでしょう。俺から言っておきます・・・」
波多野さんの声は小さかった。


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