「色々ありがとうございました☆」

まさか礼を言われるとは思わなかった。
キララを抱えたわぴ子は、今日はメイド服で、波多野さんに会いに来た。
住所は甘利先輩が教えたらしい。

「蘭丸君から聞きました。キララを真島さんから守ろうとしたって・・・私、感動しちゃって・・・」
この子、普通にしゃべれるんだな。
「真島さん?ああ、例のヤクザの兄貴か」
「真島さんいいひとなんですよ。誤解されやすいけど」
真島・・・どうもひっかかるな。
どっかで聞いた名前だし・・・でも、誰だっけ・・・。

「真島さん、いつも赤ん坊を見ると売り飛ばす!って脅すんですけど、本当は自分の作った施設に預けて、面倒見てるんですよ☆」
「でも結局ヤクザになるんだろ?」
波多野さんが言った。
「それは人によりますよ〜。カタギになる子もちゃんといますよ。私も・・・だし」
そうだったのか。
僕は真島の顔を思い浮かべた。
若く見えるが、40もつれだろう。
ヤクザが慈善事業じみたことをやっている。珍しい話じゃないが・・・。

「とにかくキララを面倒見てくれて、蘭丸君の後までつけて心配してくれて、本当感謝です☆やっぱり、見込んだとおり、波多野さん、いいひとですね」
「どういう意味だ」
「私、見ちゃったんですよ〜。波多野さんが、捨て猫拾っているところ☆わ〜漫画みたい、素敵、優しいお巡りさんだわって」
そんなところを見込まれたのか。確かに前、波多野さんが捨て猫を拾ってきたことはあった。アパートでは飼えなくて、結局近所の人にあげたんだけど。
「もう捨てたりしないでくださいね」
僕の言葉に、わぴ子は神妙に頷いた。

「結局、あの痣なんだったんだろ」
「蘭丸の話じゃ、わぴ子はドエムなんだそうだ。プレイのときについたらしい」
「本当ですかね〜?」
「お前もエムだからわかんだろ、そうゆうの、同族意識で」
「わかるわけないでしょ。ちょっと、なんですこれ、この手錠・・・」
かちゃり、僕の腕に嵌められた手錠は銀色に光って・・・。
「みのるのせいで、お預け喰らったからな、今日は朝までやるからな!」
「手錠で繋ぐことないでしょう!」
「手錠、いいだろ?指輪の代わりだ」
「え?」

「実井。俺とケッコンしてくれ!」
突然のプロポーズに戸惑って、僕の心臓はどきんと鳴った。
「ケッコンって・・・波多野さん。僕らまだ一緒に住んで3ヶ月くらいですよ・・・」
そういいながらも、僕の顔は見る見る赤くなって・・・。
見ると、波多野さんの顔も、同じように赤く染まっていた。

夕焼けみたいに。

「・・・僕とケッコンしたって、子供はできませんよ」
「100人の赤ん坊より、お前が欲しいんだ」
波多野さんは言った。










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