<ストーリー>
高校を卒業した実井は、警察官の波多野と一緒に暮らし始める。


ドアをたたく音がした。波多野さんかな?鍵は持っているはずだけれど。
そう思いながら僕がドアを開けると、
「ただいま」
警官姿で、赤ん坊を抱えた波多野さんがそこにたっていた。

「どうしたんですか、それ」
「捨て子だ。警察の前に捨てられていて、引き取り手がないから一晩預かることになった」
「預かるって・・・うちで?」
驚いているうちに、波多野は靴を器用に足だけで脱いで、玄関からあがってきた。

「仕方ないだろう。置いてはこれなかった」
「そりゃそうかもしれないけど・・・波多野さん、赤ん坊の世話なんかできるの?」
「わからん。ネットで調べてみる」
横暴な。
死んだらどうするんだ。
「お前、得意そうだろ?そうゆうの」
「僕が!?冗談じゃないよ・・・そんなの、したことないし」
「とりあえずオムツとミルク買ってくるわ。見ててくれ」
「ええっ!?ちょっと。波多野さんてば」
強引に僕に赤ん坊を押し付けると、波多野さんは部屋を出て行った。

6畳一間の風呂なしアパート。
赤ん坊の世話なんて、出来そうな環境じゃない。
全く、何を考えているのか・・・あの馬鹿男。

「おぎゃあ!」
赤ん坊が泣き始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・どうしたらいいんだ・・・」

僕は両手に抱えた案外重い赤ん坊を前に、途方に暮れた。


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