「葛西の様子がおかしい?いつものことだろ」

秋元はとりあわない。興味なさそうに肩をすくめた。
「変な小説を書いているんだ。結城さんとの」
俺が言うと、
「エロ小説?」
秋元はふっと微笑した。
エロ小説。
確かに、深くは読まなかったが、そんな内容のようだった。

「あたりなんだ?別に欲求不満なら、いくらでも相手してやるのにな」
秋元は右手を天井に伸ばして、軽く体操をする仕草をした。
「結城さんじゃなきゃだめなんだろう」
俺が言うと、
「結城さんかぁ〜。頼めばしてくれそうだけど」
「頼めるはずないだろう。そんなこと」
「いっそこと、こうしないか?誰が結城さんを落とせるか、賭けるとかさ」
秋元の目が煌く。

「そんなの、葛西に決まってる」
中瀬が口を挟んだ。
「中瀬、どうして?」
「だって、葛西は三好さんに似てるだろう?三好さんは結城さんの一番のお気に入りだし、可能性あるよ」
「葛西が三好さんに?似てるか?」
俺はマヌケな声を出した。
三好さんとは話したこともない。ただ、怖いくらいに顔の綺麗な人だという印象しかない。冷酷な感じすらする。
「葛西はもっと可愛い感じだし、似てはいないと思うが・・・」
「可愛い?葛西が?」
秋元と中瀬が同時に尋ねた。
「え?可愛くないか・・・?」
「あの蛇のような目が可愛いというなら、貴様の目がどうかしてるんだろう」
と、秋元が言った。
「蛇のような目?赤ん坊みたいな薄青い、綺麗な目だと思うんだが・・・」
「なるほど」
呆れたような声を出して、秋元は、
「貴様は葛西に惚れるんだろ?だから、あいつが可愛く見えるんだろう」
「なにを言うんだ!惚れてなどいない。客観的に見て葛西は可愛いといっているんだ!」
「はいはい、わかったよ」
中瀬が手をぱんぱんと打った。





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