「なにをっ・・・考えているんだ!?」
福本の身体を突き飛ばすようにして、俺は叫んだ。
「こんなことは・・・<思考犯罪>だぞ!」

「君からそんな言葉を聞くとはな」
口元を拭い、福本は呟いた。
「そう。政治以外のところで快楽を得ることは禁止されている。認められているのは快楽のないセックスだけだ。試してみるか?」
言いながら、福本は俺の脚を固定するベルトを外した。
ベルトが外されても、脚の感覚はなくて、動かすことが出来ない。

「よせ。俺に触るな。殺されたいのか」
「よくもまあこの状況でそんな口が利けるものだな。空威張りも大概にしろ小田切。君に出来ることはなにもない」
「こんな・・・ことが許されると思っているのか?<ビックブラザーが貴方を見てる>。あれは脅しじゃない。こうしている間も、俺たちは監視されているんだ・・・」
「それがどうした?見られていると興奮するんだ」
福本の冷たい目。
感情は読み取れない。

「君は日記に書いたな。<ビックブラザーをやっつけろ>と。一挙手一投足に至るまで盗聴されて監視される。そんな生活に嫌気がさしたか」
「貴様だって、心のそこではうんざりしている筈だ」
「俺が?」
意外そうに、福本は肩をすくめて、
「さっきも言ったろう。見られていると興奮すると」
「この・・・変態」
「変態はご挨拶だな」
「よせ」
福本が俺のものを撫で上げた。
「おや?君は快楽を感じているようだ。<思考犯罪>だな」
「それは貴様がっ・・・あぁ・・・」
「俺たちは共犯者というわけだな。小田切」

福本は怒っている。
顔には出さないが、嫉妬に狂っている。
なぜそんなことを思いついたのか、不明だ。

「君は既にジュリアを裏切っている。これがその証拠だ」
福本が囁いた。





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