夢の中で福本は言った。
「きっと闇の存在しないところで会うことになるだろう」
福本が敵か味方かなんてどうでも良かった。
福本は俺を理解する。それだけで充分だ。
まばゆい光に照らされて、俺は目を覆った。
人が立っていた。
福本だ。
冷たい目で俺を見ている。
「これは何本だ?」
手を広げて見せた。4本の指。
「4本だ」
「違う」
全身に電流が走った。訳の分からない痛みに、全身が苛まれる。
「もう一度尋ねる。これは何本だ?」
「・・・4本だ・・・4本・・・」
「違うな」
再び全身に電流が走った。
「ぐあっ」
俺は電気椅子に固定されている。腕は自由だが、脚は完全にベルトで縛り付けられていた。
「貴様は日記にこう書いた。<自由とは2たす2が4と言える自由だ。それさえあれば、あとは自然についてくる>と」
「書いた。確かに・・・それがどうした」
「この世界に自由などない。2たす2が5といわれればそれは5であり、6といわれればそれが6なのだ。党の三つのスローガンを言ってみろ」
「戦争は平和なリ、自由は隷従なり、無知は力なり・・・」
電気ショックが来るかと身構えたが、それはなかった。
死のような静けさのあとで、福本が言った。
「我々が大衆の無知の上に胡坐をかいていると思うのか?」
「・・・ああ」
「大衆を無知にしておくことで、大衆をコントロールする。太古の昔より、権力といったものはそうしたものだ。要するに、貴様みたいに自分の頭でものを考えて、はっきりと意思表示する存在は、我々にとっては邪魔にしかならない。わかるだろう?小田切」
そうして今、福本は痛みで俺をコントロールしようとしている。
間違った俺の考えを悔い改めさせる為に・・・。
福本は思考警察の手先だったのだ。そんなことも知らずに俺は・・・福本とは分かり合えると、勘違いして期待していたのだ。
「これは何本だ?」
福本はその整った指を、4本立てて、また、尋ねた。